2018年09月10日
憶測でしか言えないけれども
2018年9月4日、台風21号は日本中に大きな爪痕を残し過ぎ去っていきました。直後に起きた北海道の地震についても同様、被災された皆様には御見舞い申し上げます。
特に大阪湾では戦々恐々の中、(一個人の船乗りとして)痛ましい事故が残念ながらも発生してしまいました。
あらゆる意見が飛び交っていますが、報道を基に整理してみたいと思います。
件のタンカーの荷役終了時間について
前日の3日、お昼頃に終了していた様です。
タンカーのコンディション
空船(積荷は無し)、フルバラストだった様です。
喫水などの詳しい情報は出ていません。

台風接近と風向の変化
時系列では画像の様に9/3の13時30分ごろ貨物である航空ジェット燃料を関空に揚げ終わり、西風が吹いている状態で投錨しています。(グリーンフラッグの位置)
投錨した錨の位置は❌
台風が太平洋を北上するにつれ風向は西から徐々に北西へ、そしてさらに北に変化しています。(フラッグから❌を中心として時計回りに連続して○ポイントがある位置に船は移動で台風の右半円の危険域)
台風が更に接近し四国に上陸または紀伊水道を北上する頃、強い北東の風で強風域に入ったと思われます。(❌から左下に船は移動しています)
そしてこのあたりで錨鎖を伸ばしている様な航跡が付いています(時間を空けて二段階で伸ばしたか既に走錨と推測できる)
いよいよ台風が間近に接近暴風域に達し真東となった頃、今度は完全に「走錨」し始めています。台風の中心付近間近で通過が速いため風向の変化も数分で大きく変わっており、そのため船の移動距離が大きく、航跡に赤い線が現れています。
真東から南寄りの風向に変わる時間はほんの10分から15分くらいだった様に思われ、南東になる頃には更に走錨が加速しています。(錨鎖の長さを超えて大きく後退し
ています)
この最初の走錨時刻が海上交通センターから確認され、当該船への架電があった13時頃かと思われます。(海上交通センターは錨泊位置から0.1〜0.2マイルくらいの変化を監視しているため走錨の疑いがあればすぐにVHFで呼ばれます)
その勧告の内容などは現時点で公開されていないため、附近の船舶は傍受していたかもしれませんが明らかになっていません。
その後、真南からの暴風にはほぼ逆らうこと無く、真っ直ぐに連絡橋まで流されています。(○ポイントが停まっていない。その間約一時間くらい猶予があった様です)
そして細かいですが3枚目の画像ではAIS(船舶識別装置)情報に誤りが無ければ、船首はずっと風上を向いている様です。
疑問
そもそも歴史的猛烈な台風接近、ほんの2マイルちょっとの距離で三方を囲われた、且つ関空付近3マイルは走錨の危険が高いため(人口埋立地)避ける様にとされていた場所にあえて‘避難‘していたのは何故なのか。(凪で数時間の錨泊スタンバイ待ちとは訳が違う)
風向の変化など船乗りであれば充分に予測ができ、相当な備えをする必要があると認識があったはずです。空船であれば尚更のこと、風浪を受けて激しく動揺すること、備え過ぎということは無いくらいに警戒するべきところをどう備えていたのか。(前日に避泊していたなら時間も余るほどあったのではないかと思われる)
前述した様に国際VHF無線ではなく船舶電話だったのはなぜか。(これは報道なので無線だったかもしれない)
風が吹きすさぶ中であれなんであれ、もう一方のアンカーは落とさなかったのか、それはなぜか。(映像を見る限り左舷のアンカーしか使っていなかった様に見えていた。事実として捨て錨は左舷のみ)
当直体制はどうなっていたのか?
エンジンで支えられなかった?
船の中ではどんな対応をしていたのか。早くに諦め為す術なく衝突まで皆んなが眺めていた?
順走法(右半円)、ち駐法(左半円)、漂駐法
エンジン使用して広い海域を航行したままやり過ごしている船も多くあったのと、錨泊避難した他の船は乗り越えたので、事故は未然に防ぐことができたのでは?という最大の疑問があります。
乗員は全員無事だったのは本当に不幸中の幸いと思います。あれだけ船体に損傷があり、橋脚も落ちることなく済んで約ひと月で復旧できそうだとの報道もありました。
鉄道は運転できない期間の日割損害が加算されているそうですが、油の流出も無く目に見える被害のみで納まるのではと考えられることも幸いとしか言いようがないですね。
そしておそらく全乗員がこれから聴取され、細かいところまで報告書としていずれ明らかにされるでしょう。
ネットではこれ見よがしにデカい釣針などもありましたが、今後の情報を待ちたいと思います。
その後の調べで公表されておりますが、概ねまとめると
安全な場所と思っていた。
経験の無い、予想を上回る状況で避けようがなかった。
との船長判断。
暴風雨の中、甲板上に5人体制で当直していたが危険なので下がらせた。
エンジンは吹き始める1230頃からスタンバイし走錨中全速でも支えきれなかった。
という渦中での対応。
修繕工事や復旧するまでの補償などなどの経済的費用は500〜600億円になるとの情報。
となっています。
公表されることはない情報がありますが、また聴きの域を出ないため差し控えたいと思います。
ただ、船乗りなら一般的に理解されている、大体そうだと予想できていた、というようなものではあります。
本件は決着に相当の時間を要することが予想されます。
最終的に報告書として公表されるのは係争が決着つく後のことになると思われます。
世間から忘れられた頃、ひっそりと報告書が上がることでしょう。
しかしやはり勧告レベルとは言え、錨泊を"禁止"される場所にはそれなりに理由がある。ということを広く知らしめた一件だと思います。
ただ一点、乗員に怪我が無かったのは本当に幸運で救いでありました。
皆様におかれましては今後とも怪我や事故無く、御安全に。
安全な場所と思っていた。
経験の無い、予想を上回る状況で避けようがなかった。
との船長判断。
暴風雨の中、甲板上に5人体制で当直していたが危険なので下がらせた。
エンジンは吹き始める1230頃からスタンバイし走錨中全速でも支えきれなかった。
という渦中での対応。
修繕工事や復旧するまでの補償などなどの経済的費用は500〜600億円になるとの情報。
となっています。
公表されることはない情報がありますが、また聴きの域を出ないため差し控えたいと思います。
ただ、船乗りなら一般的に理解されている、大体そうだと予想できていた、というようなものではあります。
本件は決着に相当の時間を要することが予想されます。
最終的に報告書として公表されるのは係争が決着つく後のことになると思われます。
世間から忘れられた頃、ひっそりと報告書が上がることでしょう。
しかしやはり勧告レベルとは言え、錨泊を"禁止"される場所にはそれなりに理由がある。ということを広く知らしめた一件だと思います。
ただ一点、乗員に怪我が無かったのは本当に幸運で救いでありました。
皆様におかれましては今後とも怪我や事故無く、御安全に。
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