荷役が終わると出航となるが、次の港に入る時間によって船速を設定する。
一旦船速を決めると到着まではそのままだ。
内航貨物商船では巡航速力約11kt(ノット)前後で走ることが多い。
船の運転と車の運転は似ているという人もいるが、大きく違うことがある。
船にはブレーキが無い。
ぶつかりそう!という時にはもちろん減速したり舵を切ったりする。
車で言うとアクセルを離してハンドルを切るだけだ。
フルブレーキに当たるのは停船のためクラッシュアスタンと言って後進にプロペラを回して回避動作を取るが、一定の速力まで落ちていなければ後進には入らないため、通常そんなことになる距離まで放置していることは無い。
簡単に車に変換して言うと、高速道路の合流を全方位から接近する車を交わして行く感じ。
視界が良い時には10マイル(18.5km)先は余裕で見える。
双眼鏡で覗けば視界内にいるその船が正面を向いているか、右舷を見せているかはたまた左舷を見せているか判る。
反航船、同航船、横切り船などの関係がそれで判明する。
しかし実際に近くなりスライドとなるまでには何十分から一時間以上も先の話。
しかも広い海上で相当近くですれ違っても数百メートルは離れていて互いの相対速力は最大で50km/h程度だ。
でもだから余裕と言いたいんでは無い。
船は舵を切って向きを変え始めるまで数秒かかる。
機関回転数を下げてから減速するまで数分かかる。
その動作の効果が確かめられるのも相当時間がかかる。
そして相手の船にも動作したことが伝わらなければ、互いに危険な状況になることもある。
海上衝突予防法では、それぞれの関係について細かく動作の指定がありこうしなければならないと規定がある。
臨機応変に対応しなければならない場合も多く、充分余裕のある時期にためらわずに、そして大胆に(条文にこれも規定されている)行動する必要がある。
且つ、どう動くのか予想できない相手もある。
そんな相手にはジッと動静を睨んで針路ステディーで我慢である。
十分距離が確保できているときは眺めているだけで良い(笑)